2023年 5月
私たちの暮らす日本は第ニ次世界大戦敗戦後、その荒廃の中から先人たちの不断の努力と情熱により復興を遂げ、発展を続け世界第2位の経済大国にまで昇り詰めました。そして70年間の永きに渡り自由と平和と繁栄を謳歌してきました。
科学技術や経済や情報の進化はグローバル化を促進し、今や国境を越え地球規模で考え、取り組んでいかなければならない問題が次々と起っています。気候変動、パンデミック、ロシアの軍事侵攻、そして人類の作り出した核の脅威等々…。一方、身の回りに目を移すと少子高齢化・貧困・いじめ・介護・孤立(無縁社会)など日本社会が抱える問題、その家庭や個人が抱える問題や苦悩は数え切れないほどあります。苦悩や不安の中で押し潰されそうになりながら生きている現代の人々に、仏教は寺は僧は一体何ができるのでしょうか。
仏教では様々な苦の原因は私たちの無明煩悩にあると考えます。無明煩悩とは欲望や怒りや憎しみや妬みなどです。限りない欲望やコントロールできない怒りは苦悩をより増大させます。逆に煩悩(欲望)を小さくすることができればあるがままを喜ぶことのできる幸福な日々が訪れるのです。今、正善寺が力を注ぎ取り組んでいる寺業は納骨堂です。喜びの時も悲しみの時も大切な人にいつでも会える、利用者にとって生活の1ページとなりうる真に価値ある空間として整備し、心を込めて守り続けていく覚悟です。
僧としてはやはり原点に帰り、ご縁をいただけるすべてのお家や人々とのなにげない日常の会話、ご相談いただく場や時間、それらを大切に丁寧に積み重ねていきたいと思います。

2023年 4月
心地良い春風の中、桜咲きそして若葉が芽吹く心はずむ季節となりました。入学式・入社式と新しい出発の時です。コロナの感染者数も減少し、人の動きも活発になり始めました。とりわけコロナ禍のもと大きな打撃をうけた航空業やホテル業など本当に苦しい三年間を耐え忍んできました。いよいよ反攻の時がきました。
私たち寺院もすくなからず影響を受けました。正善寺におきましても永年に亘って行なってきた法座活動を中心としたすべての行事を中止しました。昨年末、三年ぶりに行なった永代経法要の参拝者の数は予想した半分以下に留まりました。何か一気に時間が流れ、急激な変化が起こっているように思えました。
今までやってきたことを復活させ元通りにしていくのも大切なことですが、新たな発想で新たな取組みに挑戦しなさいというサインなのかもしれません。先人たちは様々な困難や危機を乗りこえすばらしい未来を切り開いてきました。ピンチはチャンスです。これからの時代に合った新しい寺に、今をそして未来に向かって生きる人々にとって必要とされる新たなる価値ある寺へと大きく舵を切る時です。門信徒、スタッフ、関係するすべての人々の考えに耳を傾け社会の状況をしっかりと見極め、新たなる出発点に立ちたいと思います。

2023年 3月
先日、学習塾など教育サービスの会社よりダイレクトメールが届きました。「子どもたちが集い、つながり、そして学ぶ 算数・国語教室をお寺で開きませんか?」という内容でした。
地域に開かれた子どもたちの居場所づくりにお寺の空間を利用してはどうかという提案です。家でもない、学校でもない第三の居場所として、学校の終わりに地域の子どもたちが集まり、安心して過ごせ学べる場として寺は最適であるとの考えなのでしょう。
確かに寺は広い空間があり、法事などがある土曜日・日曜日は参拝者で賑わいますが、平日は閑散としています。特に夕方以降の参拝はまずありません。寺の有効利用として、また、地域社会への貢献という意味でも最高のマッチングかもしれません。同じ発想で8時から16時までワーキングスペースとして使ってもらえば、閑散としていた寺が地域のホットスポットになれるかもしれません。元はといえば寺子屋が学校教育の出発点。それが本来あるべき寺の姿なのでしょう。

2023年 2月
新型コロナウィルス感染拡大から3年。感染を防ぐために「移動の制限」「三密を避ける」「マスク・消毒・検温」など様々な対策がなされました。多くの制約の中、私たちの生活は大きく変わりました。事業を営む人々、特に旅行や飲食などに関係する方々には大きな打撃となりました。職を失い人生の変更を余儀なくされる方も多くあったと思います。
また、高齢者施設に入所されている方や病気や怪我のため入院されている方は、大切な家族との面会がなかなかかなわずさみしい想いをされたと思います。
先日、日本政府より新型コロナウィルス感染症は本年5月8日をもって感染症法の位置づけを2類相当から季節性インフルエンザなどと同じ5類に移行する方針の決定が発表されました。決してコロナ危機が終了するわけではありませんが、何か長いトンネルの先に光が見えてきたような気がします。
私たちの祖先は、過去より様々な困難や危機を乗り越えてきました。動き始める時が来ました。感染対策をしつつ、まずは「お経の会」と「寺食堂(住職のチキンカレー)」が5月より再開します!皆様の参加をお待ちしております。

2023年 1月
あけましておめでとうございます
昨年はコロナの治まらない中、2月にロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まり世界中を驚かせました。報道される無慈悲で悲惨な光景は目を覆うものであり、一日も早い平和を唯々願うばかりです。戦禍の困難に苦しむウクライナの人々へ少しでもお役に立てればと、正善寺門信徒すべての想いとして三年振りに厳修された永代経法要の御懇志751,000円を微力ではありますが人道支援に限定し届けさせていただきました。
新しい年を迎え私たちは、過去に起こり今なを続く様々な困難を解決していかなければなりません。そしてこれから起こりうる問題に備えていかなければなりません。そして一番大切な今日一日を悔いのないよう丁寧に生きていかなければなりません。不安な日々は続きますが上を向いて前に進みましょう。
年末にNHKドキュメント72時間で「看護専門学校 ナイチンゲールに憧れて」がリクエスト再放送されました。「人のためを思う心がなければ看護はできません」先生の言葉が胸に響きました。過酷な医療や福祉の現場を支える看護師さんたちの精神的支柱となることでしょう。「人のためを思う心」この言葉はすべての生業を営むすべての人々が心がけねばならない一番大切な指標なのでしょう。
正善寺におきましても人のためと思う心を大切にして、寺内一同 心をひとつにして精進して参りたいと思います。今年もよろしくお願いいたします。
